上司のヒミツと私のウソ
 けれど、最終的には先へ進むことを決めたようだった。


「全部、話す」

 矢神ははっきりとそういった。




 けれど、翌日の夕方になっても矢神はもどってこなかった。

 午後五時過ぎに谷部長から招集がかかり、緊急ミーティングが開かれた。


 理由も聞かされず、わけがわからないまま五階の会議室に入ると、見覚えのある面々が集まっている。

 先日の宣伝企画会議で集まった社内メンバーの顔ぶれと同じだった。いないのは矢神だけだ。


 既に席に着いていた本間課長と目が合った。

 彼なら招集の理由を知っているはずだとおもい、私は無言のまま目で問いかけてみたけれど、本間課長はなにも知らないという代わりに眉をひそめて首を傾げる。


 どうやら全員、緊急招集の目的は聞かされていないようだった。

 矢神の不在中に集められたこともあって、誰もが不思議そうな顔をしている。メンバーが全員揃ってしばらくすると、谷部長が現れた。
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