上司のヒミツと私のウソ
「でも、今度のことはやりすぎだ。兄には二度とあんたに近づかないよう釘を刺しておいたから、もうあの男が会いにくることはないとおもう」

 私は仰天した。


「えっ?」


 矢神が急に立ち上がり、私を見下ろした。もう普段と変わらない冷めた目つきになっていた。

「そろそろもどらないと、昼飯を食い損ねるぞ」


「お兄さんと話したんですか? 私のことで? いつ?」

「連休中」

「どこで?」

「そんなことはあんたが知らなくてもいい」

「どうして?」


 矢神がうっとうしそうな顔をした。

「さっきもいった。やりすぎだとおもったからだ。それにもうこれ以上……」

 矢神は口をつぐみ、問うような目で私を見た。


「人事部にもどりたいか?」

 唐突に切り出す。
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