上司のヒミツと私のウソ
そのころの俺は、グレているといってもかわいいもんで、学校をさぼって遊びに行ったり、スーパーの菓子をくすねたり、そんなせこい悪さを繰り返しては、毎日のように親や教師たちを困らせていた。
だが、中学受験を控えていた兄の隼人のことで頭がいっぱいだった母は、そんな俺の存在をもてあまし、近所に住む独身で一人暮らしの弟に押しつけた。
それが俺の叔父──曽根春隆(そねはるたか)だった。
「あのな。そうやって籠城するのは勝手だけどな。いくら待っても母ちゃんはもどってこないぞ」
無理やり母親に連れてこられたのは、ぼろい平家の一軒家。
冴えない垂れ目の中年オヤジがひとりで住んでいる、狭くてみすぼらしい家。
それまでは高級マンションに住んでいたのだから、当然気に入るわけがない。母が帰ると、俺は四畳半の部屋に閉じこもった。