上司のヒミツと私のウソ
 昔から気づいていた。彩夏が隼人を好きなのだということは。

 でも、そのうちあきらめるんじゃないかと、どこかで期待してもいた。ほんとうは、誰よりも強くそう願っていた。


「でもこれ、やっぱり受け取ったほうがよさそうだぞ」

 ハルが開けた箱の中身は、俺とハルとハックと、三人の名前がそれぞれ一枚ずついちご色のチョコレートペンで書かれた星形のチョコだった。




「あのあと、隼人にチョコを渡しに行ったんだ。勇気を出せたのは、庸介くんのおかげ」

 そういって笑ったあと、彩夏はためらいながらこちらを見た。まるで俺の機嫌をうかがうように。

「このまえ、庸介くんがうちに来たとき……ちょっと、びっくりしちゃった」

 その話をするために彩夏が俺を呼び止めたことはわかっていたが、やはりしらけた気分になった。


 連休中に隼人のマンションの部屋を訪ね、西森華には二度と近づくなといったのだ。
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