上司のヒミツと私のウソ
「おはようございまーす」
けだるそうな声とともに、西森の足音が近づいてくる。俺はファイルを閉じた。
「あー、暑い」
日陰に入り、少し離れた段差に座りこむ。西森が息を整えるまで数分だけ待って、俺はファイルを持った左手を掲げた。
「これはなんだ?」
西森がこちらを見たまま固まった。大きく見開かれた目がファイルに釘づけになっている。
「フレーバーティーの開発は中止だと、いったはずだが。二か月も前に」
「……人の机の中、勝手に見たんですか」
表情は冷静を装っているが、西森の口調にはいらだちと怒りが滲んでいる。
「俺は上司だ。監督責任がある」
「それとこれとは話が別です。無断で引き出しの中を調べるなんて、最低ですよ」
「じゃあ、上司に内緒で勝手な仕事をするのは許されるのか」
安田にいわれたことが気になり、どうしても調べずにはいられなかった。
西森は、与えられた仕事はきちんとこなしている。本人に聞いても、しらを切られればそれまでだ。ほかにたしかめる方法がなかった。
けだるそうな声とともに、西森の足音が近づいてくる。俺はファイルを閉じた。
「あー、暑い」
日陰に入り、少し離れた段差に座りこむ。西森が息を整えるまで数分だけ待って、俺はファイルを持った左手を掲げた。
「これはなんだ?」
西森がこちらを見たまま固まった。大きく見開かれた目がファイルに釘づけになっている。
「フレーバーティーの開発は中止だと、いったはずだが。二か月も前に」
「……人の机の中、勝手に見たんですか」
表情は冷静を装っているが、西森の口調にはいらだちと怒りが滲んでいる。
「俺は上司だ。監督責任がある」
「それとこれとは話が別です。無断で引き出しの中を調べるなんて、最低ですよ」
「じゃあ、上司に内緒で勝手な仕事をするのは許されるのか」
安田にいわれたことが気になり、どうしても調べずにはいられなかった。
西森は、与えられた仕事はきちんとこなしている。本人に聞いても、しらを切られればそれまでだ。ほかにたしかめる方法がなかった。