上司のヒミツと私のウソ
第2章 嘘を見破る方法 Don't be deceived
月曜の朝から西森に避けられている。
というより、完全に無視されている。
たしかに「人事部にもどれ」はいいすぎだった。つい勢いでいってしまったが、本気ではなかった。
そのことは西森もわかっているとはおもうのだが、あの日からぱったり屋上に姿を見せなくなり、毎日これ見よがしに仕事を早めに切り上げてさっさと帰ってしまうので、話しかける機会がなかった。
例のファイルは、今も俺の手もとにある。
西森は返せともいってこない。まるでファイルの存在など──企画のことなど忘れてしまったかのように、淡々と雑務をこなし、いつものように明るくみんなの世話を焼いて、優等生を気どって笑っている。
だが、あの笑顔はニセモノだ。二度と騙されない。
その証拠に、俺とは一切目を合わせようとしない。
屋上で煙草を一服して席にもどると同時に、西森が席を立った。こちらへやってくる。気味が悪いほどにっこり笑って。