上司のヒミツと私のウソ
「ところで、俺からも質問していいか?」

「ああ、はい。どうぞ」


 本間が裏で手引きしているのではないとわかり、拍子抜けした。

 いくら資料が綿密で用意周到だとしても、西森だけではなにもできない。


 個人がどれほどの強いおもいを持っていても、プロジェクトはひとりじゃ動かせないということを、これまでの苦い経験でさんざん味わわされた。


 それに、条件をクリアしない限り会社は……。


「二か月前、フレーバーティーの開発中止に最後まで意義を唱えていたのは、たしか企画部だったよな? 中でも宣伝企画課の矢神課長は、かなりしつこく食い下がっていると社内ではもっぱらの噂だった。それが突然態度を変えたのは、いったいどういうわけだ? なにか理由があるんだろ?」

 いきなり、想定していなかった質問をされる。
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