上司のヒミツと私のウソ
「それで? 企画部としてはなにか考えがあるのか?」

 冷ややかな声で、本間はいった。開発部を蚊帳の外にされたのが、気にくわないらしい。

「このことは、私と谷部長と柳瀬統括部長以外は知りません。ご存じのとおり、表向きは、フレーバーティーは中止ということになっていますから」


 本間は顔をしかめた。

「西森さんにもいわなかったのか?」

「もちろんです」

 本間は納得がいかないという顔つきをしている。


「フレーバーティーの開発を復活させるには、『キャラメルミルクティー』に代わる新しい商品開発案を提案しなくてはなりません。そしてその案が賛同を得られなければ、今度こそほんとうにお蔵入りというわけです」


「期限は?」

「今月末に行われる、新製品検討会議で発表することになっています」

「おいおい」

 本間は乱暴に立ち上がり、声を荒げた。

「アホかお前。なんでそんな大事なこと、今まで黙っててん。もう時間ないで。どうすんねん」

「時間はまだありますよ。あとひと月もね」
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