上司のヒミツと私のウソ
 続きをいいかけて身を乗り出した本間が、言葉をのみこむように押し黙り、ふたたび腰を下ろした。


「なるほど。なにがなんでも自分ひとりでカタをつけるってか。俺たち開発部は、なんの力にもなれんってわけやな」

「そういうつもりじゃないんですが」

「そういうことやろ。ようわかった。ま、がんばり」


 素っ気なくいって、本間は今度こそあきらめたように立ち上がる。

 ミーティングルームを出る直前、ためらうような間のあとで「西森さんには話したほうがええんちゃうか」と、小声でつぶやいた。


 本間が出て行ったあともしばらくミーティングルームに残り、ひとりで考えこんでいた。

 フレーバーティーシリーズは白紙にもどす、と頑なにいい張る柳瀬統括部長を必死で説得して、なんとか条件を取りつけたはいいが、考えがあったわけではない。

 つまり時間稼ぎだ。

 そして新しい商品開発案は、どうあっても開発部から出させるわけにはいかなかった。
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