上司のヒミツと私のウソ
「話がある」

 ドアに向かう西森の背に声をかけた。西森は立ち止まって、冷めた表情で俺を見た。


「フレーバーティーのことだ。実はチャンスがないわけでもない。ただし、それには条件があって……」

「私のファイル、返してください」


 感情のないうつろな声で、西森がいった。


「最後まで話を聞け」

「返す気があるんですか、ないんですか」

「だから、それは」

「返してください」


 覇気のないぼんやりとした目が、まっすぐ俺を見つめている。とりつく島もない。


「あの資料は、おまえが全部揃えたのか?」

「どういう意味でしょうか」


 西森の表情が一瞬揺らぎ、声が険しくなった。


「誰かに手伝ってもらったのか、それとも……」
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