上司のヒミツと私のウソ
「そうだ、ディズニーランド! ディズニーランド行こうよ! 運転手さん、ディズニーランドまでお願い」

「は?」


 俺と運転手、同時に出たすっ頓狂な台詞。


──なんなんだ、この女。


 絶句していると、女は急に拗ねたように頬をふくらませ、俺の顔をのぞきこみ、おもむろに自分の顔を近づけてきた。おもわずのけぞる。


「やーだもう。まだ思い出せないの?」

 唖然とする俺に向かって、子供のように無邪気なくしゃくしゃの笑顔を見せる。


「あたしよ、矢神センセ」


 そのくしゃくしゃの笑顔を見たとたんに、いきなりフィルターがはじけ飛んだ。

 記憶が一気に逆戻りして、上品なワンピースの若い女は手足の細い小柄な少女に入れ替わる。


「センセってば、全然変わってないんだもん。あたし、写真見てすぐわかっちゃったよ」
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