上司のヒミツと私のウソ
マンションの前に見慣れないベンツが停まっていた。
ひとめで誰が乗っているのかわかる。
今は顔を合わせたくないし、誰とも口をききたくない気分だった。
気づかないふりをしてマンションのエントランスに向かおうとすると、車の後部ドアが開いて中から隼人が現れた。
高級ブランドのスーツにサングラス。隼人は優雅な足取りでこちらに向かって歩いてくる。
「両親に会ってきたんだろう?」
こっちの行動は筒抜けというわけか。
「どうだった? 七年ぶりの再会は」
隼人の目的がなんなのか、いまいち裏が読めない。
ようすをうかがうべく無反応を装っていると、隼人がポケットから左手を出し、サングラスを外した。