上司のヒミツと私のウソ
第3部
第1章 困惑の再出発 Labyrinth of relationships
「矢神課長、見つかった?」
六階の執務室にもどり、席についたとたん安田麻琴に聞かれる。私は安田に気づかれないように深呼吸をした。
「うん」
「どこにいたの?」
「屋上」
「本間課長が探してたって、伝えてくれた?」
「うん」
「じゃあ、開発に行ったんだ、課長」
「うん」
安田の矢継ぎ早な問いかけに、短く答えるのが精一杯だった。
まだ心臓が飛び跳ねていて、おもうようにしゃべれない。
「……どうかしたの?」
「え?」
「顔、赤いけど」
「そう?」
必死に平静な態度をとり繕う。