上司のヒミツと私のウソ
 いったいどんな顔をして、毎日矢神課長と同じ部屋で仕事をしろと?


 彼だって、内心は迷惑におもっているに違いない。

 それに安田麻琴。

 もし、彼女が秘密をばらしたら?

 考えただけでぞっとする。


 人事部に残してもらえないか、もう一度、佐藤部長に頼んでみようか。それとも、いっそのこと──。

 考えても考えても答えは出てこなくて、行き着くところは退職しかないようにおもえてくる。


 せっかくの休日だというのに朝からなにも手につかず、一日中ぼんやりして過ごした。夕方、モヤモヤする気持ちを払うように、私は煙草を買いに外に出た。


 西の空に日が傾き、街は黄昏に滲んでいた。空は晴れていても暮れどきの風は冷たい。コートの襟をかき合わせ、コンビニに急ぐ。

 煙草を買ってコンビニを出たところで、チラシを配っていた若い女の子に笑いかけられた。

「すぐそこのお店で本日開店祝いの飲み放題やってます。よかったらどうぞ!」

 学生アルバイトらしい女の子にチラシを手渡される。お店の場所を確認すると、本当にそこからすぐ近くだった。
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