上司のヒミツと私のウソ

第2章 モトカノの口説き方 Troublesome love




 あの夜の行動は、たしかにうかつだったとおもう。

 そのことをおもい知らされたのは、翌日の昼休みだった。


「まさか付き合っていたとはねえ」

 福原は、近くのコーヒーショップに俺を呼び出すと、指先で煙草をもて遊びながら切り出した。


「しかも矢神さんが、あんなに独占欲の強いひとだったとは、知らなかった」

 煙草に火をつけ、おもしろそうに喉の奥で笑う。


「でもそういうの、あんまり気にしないんですよね、僕は」

 負け惜しみではなさそうだった。


 福原武史の女癖の悪さは、社内では知れ渡っていた。


 福原が以前所属していた広報部でも、女性社員と恋愛沙汰のトラブルを起こし、当時はちょっとした騒ぎになった。西森が入社する少し前だ。

 本人も多少は懲りたのか、広報部を追い出されて企画部に移ってからは、おとなしくしているように見えたのだが……。
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