上司のヒミツと私のウソ
「恋愛は自由でしょう? 僕が西森さんを好きになることも、僕の自由ですよね?」


 やはり、まったく反省していなかったようだ。


 どうしてこんな浮薄な男にひっかかるのかと、ふしぎでならない。

 とげのないやさしそうな顔立ちが、誤解させるのかもしれない。


 ひとあたりが良く、話術が巧みで、あっという間に他人のふところに入りこむ。

 そういうのも一種の才能なのだろうか。

 女に対してだけではなく、仕事においても、福原はその能力を遺憾なく発揮させているようだった。


「そのクールな顔は、いわゆる仮面ってやつですか?」


 福原の年齢は俺より三つ下だが、新卒採用だから勤続年数は俺より上だった。

 なんとなく、以前から俺に対して、腹に一物ありそうな感じを受けとってはいた。


「返事がないってことは、OKってことですね? そう解釈しますよ? まあ、もともとあなたに止める権利はありませんけど」


 黙っていると、福原は満足そうに笑って、深々と煙を吐き出した。
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