上司のヒミツと私のウソ
 店を出ると、アスファルトから立ちのぼる熱気に包まれた。強い陽射しに目がくらむ。

 握りしめた手のひらに、汗がにじんでいるのがわかる。


 怒りを抑えるのに苦労した。

 気を抜いたら、福原を殴っていたかもしれない。


 西森とは付き合ってなどいない、とはっきりいったところで、福原は信じなかっただろう。

 それに、俺と西森が付き合っていようがいまいが、どっちにしろ、福原は西森に手を出すつもりだ。


 冷静になれ、と自分にいい聞かせる。

 今は、西森を守ることが最優先だ。





「大丈夫ですから」

 西森がこちらを見て、語気を強めてきっぱりいった。

「私のことは気にしないでください」


 気にするなといわれても、無理だ。
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