上司のヒミツと私のウソ
 うわさのもとは福原に間違いない。

 たしかに今のこの状況では、俺が西森のそばにいても、西森にとっていいことはなにもない。さらに状況を悪くするばかりだ。


 うわさはいつか消える。

 西森がなんらかの形でプロジェクトに貢献すればいいのだ。結果を出せば誰も文句はいわない。


 だが、それまでの数か月、俺は黙って見ているしか手段がないのだろうか……。


 視線を感じて顔を上げると、西森がこちらを見ていた。

 俺が押し黙っていることに気づいて、やわらかく笑う。まるで俺を安心させようとするみたいに。


 やっぱり、俺の目の届くところで西森が傷つくのを見るのは、我慢できそうにない。


 西森を先に行かせて、十分後に自席にもどった。

 安田と西森は席についていたが、残りのメンバーはどこへいったのか姿が見当たらない。


 安田に聞くと、「午前中いっぱいは三人とも倉庫で検品作業を行うそうです」との答え。三人とはつまり、佐野、三好、和田のことだ。


「呼びもどしてきましょうか」

 安田がいった。
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