上司のヒミツと私のウソ
 西森の目を直視する。

 上から見下ろす姿勢になったために、西森がのけぞるように一歩後退した。顔がこわばり、緊張で青ざめている。


「……時間と場所が変更になったと、机の上に伝言メモが」

「誰から」

 西森の目がためらった。

「矢神課長です」

「俺は書いてない」

「わかってます」


 西森はすばやく俺の視線をすり抜けて離れた。

 フェンスのそばまで歩み寄り、頭上近くにのしかかる厚い雲の群れを眺める。


「もういいんです。終わったことですから」


 俺は携帯灰皿に煙草を押しつけ、火を消した。

「だから忠告しただろ、うわさはエスカレートするって。おとなしく俺のいうことを聞いてりゃよかったんだ」
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