上司のヒミツと私のウソ
 遊んでいるようには見えなかったが、そつなくこなせる程度に経験は積んでいるだろうと。

 だがすぐに、そうじゃないことがわかった。

 本人は必死にとり繕っていたが、そういうことは簡単にばれるのだ。


「私はただ、企画の仕事がしたいといっただけです。勝手に変なふうにとらないでください。そういうの、セクハラ行為ですよ」


 今度は笑うのをやめて、半分怒っている。

 生真面目に説明しながらも、俺から一定の距離をとることは忘れない。


「なんだ。てっきり俺と離れたくないから開発に行きたくないのかとおもった」

「違いますっ」

「じゃあ問題ないな。うちは開発でも企画をやるから、その点は心配いらない」

 西森は口を開いたまま、固まっている。

「話は終わりだ。すぐに手続きする」

「……ちょっと! ちょっと待って」


 昇降口へ向かいかけた足を止めて西森を見た。

 動転して泣き出しそうな顔をしている。


 呼び止めたくせに俺に触れることができなくて、いったん伸ばしかけた手を引っこめて、どうしようかと思案している。
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