上司のヒミツと私のウソ
第3章 やさしい手 Kindness and goodness
適当に用事を作って、安田とふたりで倉庫にこもる。
「いつの間にそんな話になってたの?」
扉を閉めるとすぐに、私は安田に突然変身を遂げたわけを問いただした。
「んー? 先週かな」
黒い髪にナチュラルメイクの外見はすっかり別人だけれど、クールでマイペースな態度は安田のまま。
中身は変わっていないことに、正直ほっとした。
「『RED』に加わるってほんと?」
「たぶん。課長がそういったから」
そのひとことで矢神のことを思い出しそうになり、私は急いでおもいつくままに言葉を継いだ。
「だから正社員になるの? 『RED』に参加するために? なんで? 正社員なんてまっぴらだっていってたのに」
安田は思惑ありげに目を細め、じろじろと私を眺め回した。
「見ちゃいられないからよ。いろいろな意味で」
わざとらしく大げさな溜息をつく。