上司のヒミツと私のウソ

第3章 やさしい手 Kindness and goodness




 適当に用事を作って、安田とふたりで倉庫にこもる。


「いつの間にそんな話になってたの?」

 扉を閉めるとすぐに、私は安田に突然変身を遂げたわけを問いただした。


「んー? 先週かな」

 黒い髪にナチュラルメイクの外見はすっかり別人だけれど、クールでマイペースな態度は安田のまま。

 中身は変わっていないことに、正直ほっとした。


「『RED』に加わるってほんと?」

「たぶん。課長がそういったから」


 そのひとことで矢神のことを思い出しそうになり、私は急いでおもいつくままに言葉を継いだ。

「だから正社員になるの? 『RED』に参加するために? なんで? 正社員なんてまっぴらだっていってたのに」


 安田は思惑ありげに目を細め、じろじろと私を眺め回した。


「見ちゃいられないからよ。いろいろな意味で」

 わざとらしく大げさな溜息をつく。
< 459 / 663 >

この作品をシェア

pagetop