上司のヒミツと私のウソ
「なによそれ」

「別にー」

「私がたよりないっていいたいわけ?」

「そうおもったから、課長も私に声をかけたんじゃないの」


 なにもいい返すことができなくなった。

 全身から力が抜けていく。


 廃棄処分用の古いチラシが入っているダンボール箱の上に腰を下ろすと、上面がわずかに沈んでお尻がめりこむ。気持ちも一気にめりこんだ。


「開発に行けっていわれた……」

「ん? 課長に?」


 返事の代わりにがっくりと頭を垂れる。安田が隣の書棚に背をあずけて腕を組み、「おかしいな」とつぶやく。

「聞き間違いじゃないの。だってこの前話したときは、そんなことひとこともいってなかったもん」
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