上司のヒミツと私のウソ
電話が鳴った。受話器をとろうと手を伸ばしたとき、赤い点滅が消えた。
ふと、気づいた。今日は朝から電話を一本もとっていない。常に誰かが私よりも先にとっているのだ。
熱でぼうっとする顔を上げた。
電話をとったのは隣の席の三好くんだった。目の前の安田を見た。安田も顔を上げてこちらを見ていた。
目が合い、その顔がすこし苦笑しているのを見て、安田がなにを伝えようとしているか、わかった。
私が『RED』のメンバーに選ばれる前から、宣伝企画課にかかってくる電話は主に安田と私が受けていた。
誰にいわれたわけでもなく、ほかのメンバーに比べて仕事の少ない私たちふたりが、率先して電話対応を引き受けるのが暗黙の了解になっていたのだ。
なのに、今日は、私も安田も朝から一本も電話をとっていない。全部、三好くんと和田くんが対応しているのだ。
「ありがとう」
三好くんが電話を終えて受話器を置いたあとで、おもわずいってしまった。
ふと、気づいた。今日は朝から電話を一本もとっていない。常に誰かが私よりも先にとっているのだ。
熱でぼうっとする顔を上げた。
電話をとったのは隣の席の三好くんだった。目の前の安田を見た。安田も顔を上げてこちらを見ていた。
目が合い、その顔がすこし苦笑しているのを見て、安田がなにを伝えようとしているか、わかった。
私が『RED』のメンバーに選ばれる前から、宣伝企画課にかかってくる電話は主に安田と私が受けていた。
誰にいわれたわけでもなく、ほかのメンバーに比べて仕事の少ない私たちふたりが、率先して電話対応を引き受けるのが暗黙の了解になっていたのだ。
なのに、今日は、私も安田も朝から一本も電話をとっていない。全部、三好くんと和田くんが対応しているのだ。
「ありがとう」
三好くんが電話を終えて受話器を置いたあとで、おもわずいってしまった。