上司のヒミツと私のウソ
第4章 告白 Knocks at your door
「西森さんを企画部に残してください。それが条件です」
別人のような顔で、あのとき安田はそういった。
目もとを彩るごてごてとした化粧がなくなったぶん、安田の目がいつもより近くはっきりと見えるような気がして、まっすぐに見つめられると少し調子が狂った。
「条件?」
「はい。私が正社員になって『RED』に参加する条件です」
「勝手に決めるな」
「いいんですか。そんなこといって」
安田は急に口調と態度を変えた。おもわせぶりに身を乗り出す。
ミーティングルームの飾り気のない机を挟んで、ふたりで向き合って話していた。
ドアは閉め切っているし、そうそう大きな声を出したところで外には漏れない。
「西森を開発に異動させることは、もう決まったことだ」
有無をいわせぬ口調で告げると、そうですか、と安田の声が冷ややかに室内に響いた。
「なら、課長の秘密を全社にばらします」