上司のヒミツと私のウソ
 安田は堂々といい放ち、「それから」と不敵な笑みを浮かべて付け加えた。


「課長がよりをもどしたがってること、西森さんにいいます」


 一瞬言葉に詰まった。それで、安田がますます笑みを濃くした。


「もう一度いいましょうか?」

「いや、いい」

「わかってます? 私、課長を脅迫してるんですよ」

「わかってる。条件はのむ」


 そういうと、安田はひどくがっかりしたようすで肩を落とし、両手を机の上に投げ出すようにして、椅子の背もたれに体をあずけた。


「ずいぶんあっさりしてますね。つまらないです」

「いい度胸してるな」

「ありがとうございます」


 安田は満足そうに答えたあと、


「西森さんを狙ってるひと、けっこういますよ。あのひと、中身はともかく見た目は美人ですから」

 と、臆面もなくいってのけた。
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