上司のヒミツと私のウソ
「西森さんて、なにやっても完璧ですよね。おまけに美人だし。ほんとうらやましい。開発部でも評判みたいですよ」

 私が反論する前に、中崎さんが続けた。

「里中くんから聞いたんですけど、資料をそろえるのが誰よりも早くてミスがないとか、頼んだ以上のことをしてくれるとかって。西森さんに頼めば間違いないって、みんないってるらしいです。本間課長も」

「大げさだよ。あのひとたち、ビールの飲み過ぎなんじゃない?」

 私はコピーをとりながら笑った。ちなみに私たちの会社は飲料メーカーである。

「私には無理だなあ……。西森さんみたいには絶対なれないや」

 中崎さんは溜息まじりにそういって、執務室を出て行った。


 五分後にコピーを取り終え、私は急いで会社を出た。冷たい風がビルの隙間を通り抜け、髪をめちゃくちゃにする。

 昼休みとあってコンビニは混雑していた。
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