上司のヒミツと私のウソ
「ね、庸介さんは?」
彼女に直接問われて、私は戸惑った。すれ違うひとが、ちらちらと私たちの方へ視線を投げてくる。隼人さんが代わりに答えた。
「さっき携帯に連絡しておいたから、もうすぐ現れるよ。じゃあ、僕はこれで」
あっさりいうと、今度は私に向き直り、小声でささやいた。
「聞きたいことがあれば、いつでも連絡してくれてかまいませんよ。どうせあいつはなにもしゃべらないだろうから」
不敵な笑みを残して、かろやかに去っていく。
池橋有里が顔を近づけてきて、観察するようにじろじろと私を見た。
「あなたって、やっぱりモトカノさんですよね」
黙っていると、彼女は屈託なく笑う。
「でもいまは、ただの上司と部下……ですよね?」
答えられない。
彼女は不安そうに私を見ていたけれど、すぐに視線が移動した。ぱっと顔が輝く。
「あっ、きた!」
振り返ると、矢神がエレベーターを下りてまっすぐにこちらに向かってくるところだった。私と彼女がふたりでいるのを見て、顔をしかめる。
彼女に直接問われて、私は戸惑った。すれ違うひとが、ちらちらと私たちの方へ視線を投げてくる。隼人さんが代わりに答えた。
「さっき携帯に連絡しておいたから、もうすぐ現れるよ。じゃあ、僕はこれで」
あっさりいうと、今度は私に向き直り、小声でささやいた。
「聞きたいことがあれば、いつでも連絡してくれてかまいませんよ。どうせあいつはなにもしゃべらないだろうから」
不敵な笑みを残して、かろやかに去っていく。
池橋有里が顔を近づけてきて、観察するようにじろじろと私を見た。
「あなたって、やっぱりモトカノさんですよね」
黙っていると、彼女は屈託なく笑う。
「でもいまは、ただの上司と部下……ですよね?」
答えられない。
彼女は不安そうに私を見ていたけれど、すぐに視線が移動した。ぱっと顔が輝く。
「あっ、きた!」
振り返ると、矢神がエレベーターを下りてまっすぐにこちらに向かってくるところだった。私と彼女がふたりでいるのを見て、顔をしかめる。