上司のヒミツと私のウソ
「矢神センセ、久しぶり!」

 矢神センセ?


「なんで有里がここにいるんだ。隼人はどうした」

「帰ったよ。それより、お腹すいちゃった。ご飯食べにいこ」


 あっという間に、矢神の腕に自分の腕をからませる。

 有里の言動に戸惑いながら、矢神が私を見た。私は反射的に作り笑いを浮かべてしまう。


「なるほど。不法侵入の犯人はおまえか」

 彼女の腕を無造作にほどいて、矢神は冷たい口調でいった。有里はきょとんとしている。


「えー、なにも悪いことしてないよ」

「勝手に部屋に入っただろうが」

「だって、管理人さんが鍵を貸してくれたんだもん。けっこう簡単に貸してくれるんだね。びっくりしちゃった」

「それはだなー……」

「ご飯食べながら話そうよ。相談したいこともあるし」


 説明しようとする矢神の言葉を遮って、彼女は再び細い腕をからませて歩き出す。
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