上司のヒミツと私のウソ
「そんなこといったっけ」
「いいました」
「忘れた」
せっかくふたりきりになれたのに、なんでこんなどうでもいい話をしてるんだろう、私たちは。
矢神は煙草を咥えたまま両手を頭の後ろで組んで、白い煙が風に揺れながら空にのぼっていくのを満足そうに眺めている。
仕事中には絶対に見せない、なにも被っていない裏のときの顔だ。
「課長は禁煙なんてしたことないでしょ?」
私はまた、どうでもいいことをつぶやいてしまう。
当然「ない」という答えを予想していたのに、矢神の返事は意外にも「ある」だった。
「えっ、ウソ」
本気で驚いたので、矢神が不満そうな顔をした。
「二十年くらい昔、一回だけな」
「……え」
二十年前って……いくつですか。
「いいました」
「忘れた」
せっかくふたりきりになれたのに、なんでこんなどうでもいい話をしてるんだろう、私たちは。
矢神は煙草を咥えたまま両手を頭の後ろで組んで、白い煙が風に揺れながら空にのぼっていくのを満足そうに眺めている。
仕事中には絶対に見せない、なにも被っていない裏のときの顔だ。
「課長は禁煙なんてしたことないでしょ?」
私はまた、どうでもいいことをつぶやいてしまう。
当然「ない」という答えを予想していたのに、矢神の返事は意外にも「ある」だった。
「えっ、ウソ」
本気で驚いたので、矢神が不満そうな顔をした。
「二十年くらい昔、一回だけな」
「……え」
二十年前って……いくつですか。