上司のヒミツと私のウソ
 月曜の昼に会ってから、有里はその日の夜も翌日の夜も携帯に電話をかけてきた。そして今から会いにいってもいいかと聞く。

 いまどきの女子大生はなにを考えているのかとおもう。断ると「なんでダメなの? けち」と、わずかに媚を含んだ文句が返ってきた。

 あまりにもあけっぴろげでストレートな誘いに、あきれて怒る気も失せる。


「うちの親なら心配ないよ。大賛成なんだから」

 明るい声で有里が続ける。

「なにが」

「結婚に決まってるじゃない」


「……その話は白紙にもどしたはずだが」

「なんで? みーんな賛成してるんだよ。矢神センセのご両親にも、結構気に入られちゃってるんだから、あたし」

「そういう問題じゃないだろ」

「あたしのこと嫌い?」


 率直に聞かれると返答に困った。嫌いとか好きとかそういうことではないのだ。
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