上司のヒミツと私のウソ
──西森は脅されてもいわないな、そんなことは。

 西森から本音を聞き出すのに、あとどれくらい時間を要するのだろうと考えると、暗い気持ちになった。


 それでなくとも『RED』が暗礁に乗り上げていて、かなりまずい状態なのだ。このことを知っていちばん責任を感じるのは西森だろう。きっと落ちこむ。


 社内に憶測が飛び交う前になんとか手を打ちたかったが、どうにもならなかった。


 明日は水曜で、定例ミーティングがある。報告しないわけにはいかないだろう。この数日、なにも状況を変えられなかった自分が歯がゆくてならない。


 だが、あきらめてはいない。まだ時間はある。

 あきらめなければ、必ず打開策は見つかるはずだった。





 水曜日の定例ミーティングは、いつになく緊張した空気に押し包まれていた。

 本間と俺は平静を装ってその空気に気づかないふりをし、いつもどおり各部門からの進捗報告をうながした。
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