上司のヒミツと私のウソ
「そりゃそうですよね」

「嫌な予感はしてたけど」

「最終的には全員一致で決めたことじゃない」

「どうすんのよ、今さら変更なんて」

「だから僕はやめておいた方がいいっていったんだ」


 口々にいい、誰ひとりこちらを見ない。

 先週の金曜日から、上層部を相手に繰り返し『RED』の説明をしてきた。


 本間と俺は週末の休みを返上して彼らを納得させるためのプレゼン資料を作り、週明けから資料を手にひたすら説明をして回った。しゃべりすぎて、もう声が出ない。


 いいたい放題わめきちらし、いっこうに静まろうとしない連中を見ているうちに、疲労といらだちが頂点に達した。


「最後までひとの話を聞け!」


 怒鳴った瞬間に、あっ、とおもったがおそかった。


 会議室は水を打ったように静まりかえり、全員が俺に注目した。西森と安田のふたりだけが顔を蒼白にしているのを除いて、誰もがぽかんと口を半開きにしている。
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