上司のヒミツと私のウソ
経営会議におけるプレゼンテーションは、無惨なものだった。ひとことでいうと惨敗である。
社長以下、役員たちの『RED』という商品名に対する拒否反応は、こちらが想像した以上に凄まじかった。
「紅茶にそんな謎めいた名前をつけなくてもいい」
言語道断とばかりに社長はいい、ほかの役員たちも口を揃えて異を唱えた。「○○紅茶」や「○○ティー」といった、はっきりとわかりやすい名前がいいというのだ。
若い女性向けの商品であることや、和のイメージにとらわれず、できるだけ日常に近い商品にしたいという意図を説明したのだが、まるで聞き入れられない。断固として首を縦に振らないのだ。
自分のプレゼン力のなさに嫌気がさした。
上層部を説得することは、この立場にいる人間に与えられた使命だというのに。無力な自分を痛感してしまう。
「もうあきらめたらどうだ」