上司のヒミツと私のウソ
「無駄だといってるんだ。商品名を変えない限り、先には進まん」

 部長のいうとおりだった。くやしいが反論できない。

「代案を考えよう、な? そうだ、『べにしずく』なんてどうだ?」

「そのまんまですやん」

 間髪入れず、本間が突っこんだ。部長は苦虫を噛み潰したような顔をして、本間をじろっと見た。


「だいたい、おまえたちだってこうなることは予想していたはずだぞ。『一期一会』のときにさんざん手を焼いたのを忘れたのか? あのときは、幸いにも上層部が最終的に折れてくれたからよかったものの、あれだって一か八かの賭けだった。二度目はないかもしれない」


「だからこそです。もしも『RED』が成功すれば、『一期一会』がまぐれ当たりじゃなかったことを、証明することにもなるんです」


「だが、最初はプロジェクトメンバーの大半が『RED』を商品名にすることに反対したそうじゃないか、え?」

「でも最終的には全員賛成したんですよ」

 本間がいい返す。
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