上司のヒミツと私のウソ
 年齢は二十八歳だと聞いていたけれど、実際に会ってみるとテレビで見るより小柄で、幼く見えた。

 彼女は長い髪をうなじできれいにまとめ、ダークグレーのパンツスーツをぱりっと着こなしている。メイクは派手すぎず、ブラウン系の渋めの色を使い、注文通り「デキる女」のイメージに仕上がっている。

 いつも意地悪な先輩役で登場する、ドラマのイメージそのものだ。


「西森さんが、今度の企画を考えたんですよね」

 顔を上げると、探るような小声でいった。

「私を起用したいといってくれたのも。さっき、矢神さんからうかがいました」


 印象深い大きな目が私に近づく。

 私ははじて間近で見る芸能人にどう対応していいかわからなくて、戸惑った。矢神も、どうしてそんなことまで彼女に話したのだろう。


「ええ、まあ……、はい」

 おぼつかない返答をして、愛想笑いでごまかした。


 彼女の大きな目は印象的だが、これまでのドラマでは、いつも主人公を睨んだり脅したりするシーンで威力を発揮していた。
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