上司のヒミツと私のウソ
「あ、はい。そうです。彼女の日常をドラマ仕立てで描いていきます。今回は白いシャツなんですけど、ハンカチとか、スケジュール帳とか、アイスクリームとか、タイトルバックにする“白”は毎回変わります。ただし“赤”のほうは変わりません。もちろん、いつでも『RED』です」


 ごりごりと顎をかきむしりながら、柳瀬部長は「あ、そう」とそっけなくいい、セットの方へ歩いていった。





 撮影が無事に終わったのは、夜もかなり遅い時間になっていた。

「ああ~、疲れたあ」

 スタジオを出たとたん、安田が溜めこんでいたストレスを解放するような声でいった。


「終わったねえ」

「いやいや、問題はこれからでしょ」

「どうなるのかねー、『RED』は」


 撮影に立ち合ったほかのメンバーが、口々にいう。安田は彼らが駅に向かって歩き出したのを見送って、私の横に並んで歩く。
< 652 / 663 >

この作品をシェア

pagetop