上司のヒミツと私のウソ
「柳瀬部長の反応、どうだった?」

 安田が小声で聞く。

「んー。悪くはなさそう、かな」

「そっか」

「でも、やるだけのことはやった」

「うん。結果は天のみぞ知る、なるようにしかならないもんね」


 安田はにっこり笑って、私の前を歩き出した。

「私、いったん会社にもどるね。秋田さんたちに報告しないと。みんな心配して待ってるかもしれないから」


 私が「それなら私も一緒にもどるよ」というと、安田は横断歩道の前で立ち止まって「ダメ」といった。


「あんたは、そっち」

 そういって、私の後ろを指さした。


 振り向くと、いつのまにか矢神が私の後ろに立っていた。安田に指をさされて、きまり悪そうな顔をしている。
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