上司のヒミツと私のウソ
エピローグ



「なにこれ!」

 企画部の倉庫に足を踏み入れたとたん、私はおもわずそう叫んでいた。横で安田が平然と「なにが」という。


「信じられない! 私がいなくなってからたった半年しか経ってないっていうのに、どういう使い方したらこうなるの?」

「だってー。しょうがないでしょー。管理人不在なんだからー」


 間延びした口調で安田がふざける。

 私は足もとに散らばるゴミとも資料とも区別のつかないモノを拾いかけて、安田に止められた。


「やめときなって。もう時間ないし」

「う……」


 腕時計を見た。送別会が始まる午後七時まで、あと十五分たらずだ。

 私はしかたなく片付けるのをあきらめた。来週、昼休みにでも掃除をしにこようかと考える。
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