俺様の熟した恋の実~10years~
何か思い出すようにして、羽音はゆっくり話を続けた。
「卒園したばっかりの3月に離婚したの。いきなりパパがいなくなって、名字が変わった…」
「理解できたの?そんないきなりで」
「できなかったよ。ママには“名字変わるだけよ”しか言われてないし」
「変わったの名字だけじゃねぇよな」
「ほんとだよねっ」
初めて話してくれた羽音の家庭環境。
俺と離れてた間に、そんなことあったんだ……。
「それで……気付いたらママも仕事でいないし独りぼっちだった」
「泣き虫なのに、よく頑張ったじゃん……。羽音にしては」
「寂しかったよ?だって、泣いても涼雅みたいに慰めてくれる人いないんだもん」
笑って俺に話す羽音だけど、どれだけ辛かったか俺には分かんない。
気の効いたこと何も言えない自分が、情けない。