俺様の熟した恋の実~10years~
人の少ないホームに羽音が乗る電車の放送がかかる。
今日泊まらせるようにすればよかった……。
「そろそろ電車来ちゃうね」
「あぁ。そーだな」
「あたしいなくなったら寂しい?」
「むしろ、静かになるから嬉しい!」
「嘘でも寂しいって言ってよっ!」
嬉しいなんて嘘をつくと、ホームには帰りの電車が来た。
羽音が側にいる誕生日は最高だった。
クッキーだってほんとは、すっげー嬉しかったし。
「電車来たから帰るねっ」
「あのさ……」
「ん?」
「クッキー……うまかった。ありがと」
「どういたしまして♪大好き」
「あっそ。いいから早く乗れよ!」
思いがけない羽音の言葉に照れ隠し。
笑顔で大好きなんて言われたら俺の負け。
照れる羽音にキスだけしてすぐに電車から離れる。
来年も再来年もずっと側にいてほしいなんて初めて思った。