最後の願い 〜モテ男を惑わす地味女の秘密〜
それから定時になるまでが、なんと長かった事か……
俺は莉那先輩が上がるのを見届け、少し間を空けてから仕事を上がった。
「では主任、すみませんがこれで……」
「ああ、お疲れ。しっかりね?」
「はい」
主任はなぜか俺を励ましてくれ、俺はそれが嬉しかった。“吉報をお待ちください”なんて言ったら、調子に乗りすぎだろうな。
でも、時間が経つに連れ、俺の中で期待がどんどん膨らんでいったのは確かだった。
1階へ降りるべくエレベーターホールへ行ったら、丁度下りのエレベーターが来たところで、急いでそれに乗り込んだら莉那先輩と一緒になってしまった。
ほぼ満杯のエレベーターの中、莉那先輩は俺を見て目を丸くし、しかし例の“100万ドル”の笑顔をくれ、俺は目だけで彼女に挨拶をした。それはもちろん、周りに人が大勢いるからだ。
それでも、俺と莉那先輩のアイコンタクトに気付き、チラチラと俺たちを見る人はいたけども。
1階でエレベーターを降り、俺は莉那先輩とは付かず離れずの距離を置いて歩くつもりだった。周りの目を気にして。ところが、
「何食べようか?」
莉那先輩は俺の左側にピタッと寄り添うようにし、上目遣いでそう言ったので、俺は泡食ってしまった。