最後の願い 〜モテ男を惑わす地味女の秘密〜

「ああ、美味しかったあ。ご馳走さまでした」

「本当に美味しかった?」

「はい。今まで食べたカレーの中で一番美味しかったです!」

「もう、そんなわけないじゃない……」

「と思えるほど美味しかった、って事ですかね? あはは」


というのは本当だ。もっとも、何を食べても同じ事を言ったかもだけど。


二人で食器を洗い、畳に並んで腰を下ろした俺と恭子さんだが、いつもの調子が出ない。気まずい、というほどではないが。


なぜなら、いつもは早々にシャワーを浴びたり風呂に入ったりし、テレビを見ながらが多いがイチャイチャしたりベタベタしたり。

そして最後はベッドへ……という流れだが、今夜は恭子さんが生理なのでそれは出来ない。イチャイチャ、ベタベタまでなら出来るかもしれないが、それだけではかえって辛くなると思う。俺が、だが。


「テレビ見ようか?」


と言って恭子さんがリモコンに手を伸ばしたのを見て、俺はとっさにその手をやんわり押さえた。


「点けなくていいです。それより、話をしませんか?」


俺はこれから言おうと思う。俺の素直な気持ちを、恭子さんに。そして、恭子さんの気持ちを聞かせてもらおうと思う。ちょっと怖い気もするけれど……

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