最後の願い 〜モテ男を惑わす地味女の秘密〜
「うん、いいわよ? どんな事を話す?」
恭子さんは体を俺に向け、綺麗に澄んだ瞳で俺を見つめた。もう邪魔な眼鏡は掛けておらず、直に至近距離から見つめられると、俺はいつもドキドキしてしまう。
唇は前と違って美味しそうなピンク色。食事の後に口紅を塗り直したらしい。
口紅と言えば、莉那先輩からは決して話題にするなと言われていたが、あまりに真っ赤な口紅が恭子さんに似合っていなかったから、伊達眼鏡をやめる事と共に、淡い色に変えるように俺は言ったんだ。
恭子さんは嫌がり、怒ったけど、その方が絶対にいいからと粘り、最後には聞き入れてもらった。
その結果、恭子さんは見違えるように美しくなり、俺は前からわかっていたけども、表情や振る舞いが明るくなったと思う。
例えばだが、今の恭子さんなら、あの派手な中嶋さんとでも釣り合うのではないかと……って、最悪な例えだな、おい。
バカな事考えてないで言おう。言ってしまおう……
「えっとですね、今まではっきり言った事はないと思いますけど……」
ああ、やっぱり緊張するなあ。
「俺……恭子さんの事、す、好きです。すっごく」
言ったあ。言えたぞ!