最後の願い 〜モテ男を惑わす地味女の秘密〜
喫茶室へ行き、莉那先輩と向かい合わせに座った。
「裁判長……」
「はあ?」
「主文は省略して判決を言ってください」
今の俺は、まるで死刑判決を待つ被告人のような心境だ。もちろん経験はないが、きっとこんな感じなんだと思う。
「何言ってるのかさっぱり解らないわ。それより、いったい何があったの?」
「え? 裁判長は何もご存知ないので?」
「ふざけないで!」
「すみません……」
どうやら死刑宣告を受けるわけじゃないらしい。よかった……
「このところ恭子に元気がないし、あなたもそうらしいじゃないの。主任さんが心配してたわよ?」
「はあ」
そうか、主任がねえ……。俺って、わかりやすいからなあ。
「ねえ、何があったのよ?」
「恭子さんから聞いてないんですか?」
「聞いてない。っていうか言ってくれないのよ。無理に聞こうとすると、あの子泣いちゃうんだもん」
「えっ? 恭子さんが、泣く……?」
「君、恭子に何か酷い事を言ったの?」
「まさか。むしろ泣きたいのは僕の方ですよ……」
俺はあの日、恭子さんにプロポーズし、呆気なく断られた事を莉那先輩に話した。