最後の願い 〜モテ男を惑わす地味女の秘密〜

私と莉那は同い年で同期入社。莉那は広告部で営業担当。綺麗で明るく行動的な女の子。つまり私とは正反対。

そんな莉那が私なんかの友達になってくれた事はとっても不思議。もちろん莉那の方から私に話し掛けてくれた。たぶん同期の中で孤立した私に同情してだと思う。


そして一緒にお昼ご飯を食べたりしている内に、私達は自然と仲良くなった。私の一方的な思い込みかもしれないけれど、莉那は親友だと思っている。今までの人生で、初の……


莉那には、私の心臓がオンボロだという事を話した。唇の事も、伊達眼鏡の事も。もちろん他の人には内緒にしてもらうようにお願いをして。

そして、私は長く生きられないのだと言うと、莉那は綺麗な涙をポロポロ流してくれた。



中島君に面影が似ている“彼”が、莉那に気があったとしても全く不思議はないと思う。だって、もし私が男の子だったら、私だってきっと莉那に恋したと思うから。

でも正直に言えば、少しがっかりしちゃったけども。


それからは、名前も知らない彼を探すのが、日々の私の楽しみになった。チャンスは社員食堂と電車。
偶然にも、彼と私は同じ電車を使っていた。朝、彼は4つ先の駅で電車に乗り込む。帰りは滅多に会えないけど、朝はかなりの確率で彼に会えた。と言っても私からの一方通行で、彼が私の存在に気づく気配は全くなかった。



そんなある日の社員食堂で、私はうっかり声に出してしまった。


「なんだあ。今日はいないのか……」

と。

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