最後の願い 〜モテ男を惑わす地味女の秘密〜

彼がよく一緒にお昼を食べる、やはり名前を知らない男の子が、今日は一人で食べていたのだ。


「誰のこと?」


すかさず莉那に聞かれ、私は自分が声に出してぼやいた事に気付いた。


「な、何でもないの」

「何でもないって事はないでしょ? その慌てぶりで……。いつも冷静なあなたが……」

「本当になんでもないから、聞かないで?」


そうお願いしたのだけど、


「ダメー。話して。私達は親友でしょ? それなのに私に隠すなんて、許さないんだから……」


莉那が“親友”と言ってくれて、私は驚くと共にとても嬉しかった。私の勝手な思い込みじゃなかったんだ……


「わかった。聞いてくれる? 実は私、中2の時に好きな男子ができたの。中島君っていうんだけど、それが私の初恋だった。高校は……」


私は莉那に中島君の事を話した。初恋の相手で、5年もの間、ずっと目で追っていた事を。そして、この会社で中島君に面影が似た“彼”を見つけ、今は彼を目で追うのが私の楽しみなのだと。

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