最後の願い 〜モテ男を惑わす地味女の秘密〜

莉那と川田君とは会社の玄関で待ち合わせ、莉那の案内で私達は小料理屋さんへ入った。


向かいに座った川田君。遠くから見て可愛い子だなと思ってたけど、近くで見る彼は可愛いだけじゃなく凛々しい顔をしている。中島君に似てると思ってたけど、よく見るとあまり似てないかもしれない。

中島君とはタイプも違うみたい。中島君はどちらかと言うと体育会系で、正義感の強い優等生というイメージだったけど、川田君はもう少し柔らかいというか軽いというか……悪い意味ではなく。特に笑顔が素敵で、明るくて優しそうで、親しみやすい印象を持った。


莉那と川田君はかなり親しいみたいで、二人でメニューを覗きながら、ああでもないこうでもないと楽しそうに料理を決めて行く。私はそんな二人を羨ましく、ただ見つめるだけだった。


川田君と話す勇気はなかったけど、莉那がいれば大丈夫だと思った。お喋りは莉那に任せ、私はこっそりと川田君を至近距離で見ているだけでいいや。そう思っていたのだけど……


「二人ともごめん!」


莉那は、まだ頼んだ料理に箸も付けていないのに、いきなり立ち上がると帰ってしまった。他の飲み会に行くのだそうだけど、私と川田君を二人だけにする作戦かなと思った。

でも、そんなの困るって……


困ったのは私だけではないらしく、川田君はハアーと溜め息をついた。さもがっかり、という感じで。

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