最後の願い 〜モテ男を惑わす地味女の秘密〜
「お母さん、今お医者さんが言ったのはどういう事ですか? 手術って言ってましたよね?」
俺は馴れ馴れしくも、恭子さんのお母さんを“お母さん”と呼び、今聞いたばかりの医師の話について聞いてみた。
今は馴れ馴れしいとか、他人の家の事情だからとか、そんな事を気にしてなんかいられない。恭子さんの命に関わる事であるならば。
お母さんは一瞬驚いた表情をしたが、お父さんと素早く目配せをすると、
「あなたには全てをお話しますから、お掛けになって?」
と言ってくれ、俺は廊下のベンチシートに座り、お母さんも隣に座った。
「恭子の心臓の事、あの子からは聞いていないのでしょ?」
「はい、何も……。でも、僕は気付くべきでした。迂闊でした。本当に申し訳なく思っています」
俺はお母さんに深く頭を下げ、自分の愚かさと不甲斐なさを詫びた。
「いいんですよ、そんな事は気にしないで。たぶんあの子はあなたに知られたくなくて、必死で隠したと思うのね。だから、気付かなくても無理ないと思うわ」
「でも……」
「後であの子から怒られるかもしれないけど、あなたには話したいの。あの子の体の事。いいかしら?」
「はい、もちろんです。ぜひ聞かせてください」