最後の願い 〜モテ男を惑わす地味女の秘密〜
「あの子の心臓が悪いのは、私のせいなんです」
お母さんはいきなりそんな言葉を口にした。俺が「えっ?」と驚いていると……
「おい、それを言うのはやめなさい」
と、すぐにお父さんは止めたが、お母さんは苦笑いを浮かべ、
「これを言うと主人にも恭子にも叱られるのよね……」
と言いながらも、
「私は心臓が悪いのに、命がけであの子を産んだんです。それが間違いだったのか、未だにわからないけど、あの子は生まれながらに心臓が悪かったんです」
と続けた。
「間違いなんかじゃないと思います」
俺は咄嗟にそう言った。そして、
「お母さんが産んでくれなかったら、この世に恭子さんは存在しなかったんですから、間違いなんかじゃないと僕は思います」
更にそう言ったのだが、
「ありがとう。でもね、辛そうなあの子を見ていると、私は……」
お母さんはそう言うと声を詰まらせ、俺は何て言っていいかわからなかった。
「やめなさい。川田君が困ってるじゃないか……」
すかさずお父さんはそう言ったが、そのお父さん自身も困っていると、俺は思った。
「そうね。ごめんなさい。あの子の話をしなくちゃね?」
そう言ってお母さんは目にハンカチを当て、恭子さんが子どもの頃からの事を話し始めた。