最後の願い 〜モテ男を惑わす地味女の秘密〜
当然の事ながら、主治医もご両親も恭子さんに手術を受けさせようとしているのだが、なぜか恭子さんはそれを承諾しないのだという。
「たぶん恭子は、手術を受けないつもりなんだわ」
「そんなバカな。恭子さんは死を待っているんですか? お母さんやお父さんはそれでいいんですか?」
「…………」
俺のストレートな言い方に、ご両親は沈痛な面持ちで黙り込んでしまった。ご両親がそれでいいと思ってるわけはないと思う。しかし恭子さんの意思を尊重しなければならず、苦しんでいるのだと思う。
そう。恭子さん自身が、生きたいと思わなくてはダメなんだ。長生きしたいと……
「僕は恭子さんを説得します。手術を受けるように。何としてでも。いいですよね?」
俺はお母さんを、そしてお父さんを真っ直ぐに見てそう言った。するとお二人は、まるでタイミングを合わせたかのように、「お願いします」と同時に言い、俺に向かって頭を下げられた。